稽古場日誌

あたしのおうち 長谷川 尚美 2019/02/22

ルーツをたどると

小学生のときに夢中で読んだ『ガラスの仮面』という漫画によって私の演劇への興味は大きく放たれたといっていい。
極寒の中での演技を会得するために冷凍庫に入ったまま芝居の練習をしたり、乞食の役をやるために浮浪者の生活をしたり、人形の役をやるために体中にギブスをして生活したり……演劇をやるというのはこのようにすさまじいことなのだと夢中になって読みふけった。

主人公マヤが『忘れられた荒野』というお芝居で狼に育てられた狼少女ジェーンに取り組むくだりを読んだ際は、校庭の講壇の上で四つ足になって狼少女になりきり吠えてみたりした。また、作中劇『二人の王女』に興奮し、全てのセリフを原稿用紙に書き写して脚本を完成させ、セリフを反すうした。

そんな私が中学受験の際に、学校を選ぶ最終的な理由として掲げたのが「演劇部があること」だった。(今思えばどこの学校にもたいていは演劇部はあったと思うが……)

中・高の演劇部の活動はその思い込んだ情熱のままに邁進した。
文化祭、グループ劇、学年劇と常に何らかの台本がかばんの中に入っていたし、作業もひどく多かった。夏休みも連日稽古で夜通し衣装縫いをしたり、朝の礼拝をさぼって(先生申しわけありません)講堂や家の近所でこれまた衣装を縫っていた。

大学に入ってアルバイトと授業で忙しい毎日を過ごしていたが、大きな転機となる出来事があり、これからの人生を本当に考えた。
そのときに、まだ演劇をやりつくしていない、まだまだ見ていない先がある、という気持ちがふつふつと湧き上がってきた。それからは一気に「私はどんなものが好きなのか、どこで演劇を学ぶか、どこで活動したいのか」日々楽しく研究することとなる。
そして数ある劇団の中から高校生の頃から観劇していた山の手事情社に応募した。

今でも『ガラスの仮面』を目にする度、耳にする度、思うのである。子供の頃に影響を受けたものの大きさを……
もちろん挫折もあるし、夢みたそのままに進めなくても、また何かに影響されて、何かに関係を持って次の扉が開かれてきたと思っている。

自分のルーツを詳細にたどっていくとどんな体験をしてこんなことも好きで、あんなこともしていたんだなと改めて感じる。

今年の研修生たちも自分のルーツを掘り起こしていることと思う。きっと自分でも忘れていたことに気づいたり、驚くことがあるのではないか。どんなものが出てくるのか、と期待して私もワクワクしている。

修了公演『あたしのおうち』。劇場にお越しいただければ幸いです。 

長谷川尚美

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あたしのおうち

2018年度研修プログラム修了公演『あたしのおうち』
日程:2019年3月6日(水)~10日(日)
会場:大森山王FOREST
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2019年度研修プログラム「俳優になるための年間ワークショップ」
オーディション開催中
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