稽古場日誌

オドラデク 研修生 2020/03/16

The 人間

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3月の本公演『桜姫東文章』は公演延期となってしまいましたが、プロの俳優の役作りや演劇が出来ていく過程を見学するのも大切な研修の一環です。研修生たちは足繁く『桜姫東文章』の稽古場に通い、俳優の苦悩を目撃。自分なりの考えを文章にしました。修了公演『オドラデク』に確実に生かされる見学日誌です。
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『桜姫東文章』の稽古場見学をしている。

桜姫達の台詞を聴くたびに、人間なんて自分のことしか考えられない生き物だ、気を使うだけ無駄なんだ、という気分になる。
桜姫は自分を強姦した相手の釣鐘権助に恋をし、暗闇で唯一見えた刺青をお揃いで入れ、子どもまで産むという超恋愛体質。
非人に落ちた桜姫は、元お坊さんの残月に遊女屋に売り飛ばされそうになり、その場で襲われかける。運悪く元腰元の長浦に見られ、自分のオトコの残月を寝取られたと勘違いされてパニックになったりする。
ストーリーをみると「どうしようもない」けど、本当はすごく普通なことなのかもと私は思う。
自分たちで作った「どうしようもない」に人間は囚われているものだ。
それは見ていてとても痛い。だけど羨ましくもある。
この痛みを《四畳半》というスタイルで創り上げられていくことにヒヤヒヤする。
《四畳半》は意味のある身体で止まって台詞を言う。
見ていると、うわ、そこ、見せつけないで……! と心の中でのたうちまわってしまう。
生きているな、と感じる。
私は他人の目を気にしてしまう。
私がここに存在していることが許されない気がして、つどつど許可を求めているような感じだ。
劇場で『桜姫東文章』を見たら、私はどれだけ苦しんで、どれだけ生きてることを噛みしめるのだろう。
生きていてよかったと思うのだろうか。

公演は延期になってしまったが、さらに熟成されていくのかと思うと、いまからそれが楽しみで仕方がない。

だがその前に、4月の研修プログラム修了公演『オドラデク』で私は生き延びなければならない。
沢山の”目を背けたい私”にのたうち回る日々だからだ。
あざだらけになっても必ず、私はそこにいる。
ぜひ見届けに来て下さい。

櫻井いろり

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odradek

2019年度研修プログラム修了公演『オドラデク』
日程:2020年4月8日(水)~12日(日)
会場:大森山王FOREST
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『オドラデク』公演について

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