大人かぶれ

中学生の頃、コーヒーを飲む事が好きだった。
コーヒーが好きなのではない。コーヒーを飲む事が好きだったのだ。
コーヒーは大人と子どものさかい目、「違いのわかる男」になりたかった、早く大人になりたかった。

当時、私は某ドーナツショップのおかわり無料のコーヒーをひたすら飲んでいた。
そんな「大人かぶれ」な私はコーヒーの味の良し悪しが分からず、煮詰まったまずいコーヒーを1日に何杯も飲んでいた。

私は「煮詰まったコーヒー風味」で「違いのわかる男風味」なのかも知れない。
煮詰まったコーヒーを飲むと、私の青春時代を思い出す。

それに対してレモンだ。
レモンは青春の象徴たり得るのだろうか。
甘酸っぱい青春なんていう表現はベリー系やみかんならいざ知らず、レモンではすっぱすぎる。

そして多くの日本人は、大人になってからレモンのお世話になった筈だ。
レモンサワーだとか、居酒屋の唐揚げや焼き魚にかけるレモンだとか、脂の乗ったサバやホッケには欠かせない。
レモンは実は大人の味である。

しかし、「風味」ということは実際にはレモンは入っていないのかも知れない。
そもそも「風味」とはなんだろう。
飲食物の香りや味わい、人から漂う風情の事を言うらしい。

ではニュージェネレーションの彼、彼女らは、レモンという大人の味に憧れる「大人風味」なのかもしれない。
早く大人になりたいと思っていた中学生の頃の自分と同じく、いつまでも「コーヒー風味」で大人になりたくてもなりきれない。

『ほんのりレモン風味』では、俳優になりたくてもなりきれなかった彼、彼女らが「俳優風味」から、本当の「俳優味」に変わる瞬間なのかもしれない。

高島領也

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『ほんのりレモン風味』omote

ニュージェネレーション公演『ほんのりレモン風味』
日程：2022年2月23日(水･祝)～27日(日)
会場：大森山王FOREST

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