稽古場日誌

こくごのじかん 斉木 和洋 2022/08/03

『しあわせな王子さま』のことを思い出すと夏

『しあわせな王子さま』は、アイルランドの作家 オスカー・ワイルドが書いた短編小説。日本では、『幸福な王子』というタイトルで有名な作品です。

『しあわせな王子さま』は2016年より取り組んでいる作品で、別の演出家のもと立ち上がりました。初演時は私も観客として、このお芝居を見ていました。会場は、大田区池上にある本門寺の境内でした。本門寺で開催されたキャンドルナイトの一環で上演していたのですよ。暗闇に浮かび上がる俳優の姿がとても幻想的だったことをよく覚えています。2016年のことなので、もうかれこれ足掛け7年ぐらいになりますね。その間、ツバメ役を演じる名越さん以外は、配役が変わり、私は3代目になります。

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初演を経て、今では全国の小学校で、この作品を上演しています。会場は小学校の体育館。衣装だけ持って、現地入りして、現地の先生方が用意してくださった学校にあるイスと机を組み立てて舞台を作ります。30分くらいで設営を済ませたら、もうお客様の小学生たちや先生方がいらっしゃいます。本編をご覧いただく前に、小学生たちと一緒に身体を動かしたり、声を出したりします。そして、お芝居を上演します。

この作品が描かれている季節は冬。冬を越すために、暖かいエジプトへ向かおうとしているツバメが、王子の願いを聞いて、そばに残り、最後は凍えて死んでしまう。そんな悲しいお話なのですが、私たちがこの作品を上演する季節はたいてい夏。冷房のない体育館で、太陽の光がさんさんと差し込むなか、俳優の身体と声を駆使して、物語を紡ぎます。汗をだらだら流しながら演じます。お客様の想像力だけが頼りです。それでも、情景が浮かびましたと温かいお声をいただくことの多い作品です。

今回は、小学校で上演したときのように、本編が始まる前に、お客様と一緒に身体を動かす機会があります。安田演出の『しあわせな王子さま』、今回初めて一般のお客様にご覧いただきます。普段とは違ったお客様との出会いに、今からわくわくしています。

斉木和洋

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『しあわせな王子さま』あらすじ

街の一角に、全身を純金で覆われ、目にはサファイアが輝き、剣の柄にはルビーがはめ込まれた王子の像が立っていました。
王子は自分が持つ宝石や純金を、街に住む貧しい人たちに届けて欲しいとツバメにお願いします。
ツバメは王子の言う通りにします。しかし、ツバメは冬を越すために、暖かいエジプトへ向かう途中でした。
街には冬が訪れ、雪が降り積もります。
ツバメは何も見えなくなった王子の側にいることを選びます。そして……。

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『こくごのじかん』
日程:2022年8月19日(金)~20日(土)
会場:大田区民プラザ 大ホール

詳細は こちら をご覧ください。

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