稽古場日誌

僕らはみんな逃げている 高島 領也 2024/02/09

[稽古リポート 2月3日]「そうですよね」

本番まで一か月はとうに切っている。
先日通しを迎えたニュージェネレーションメンバーは改めて一通りのシーンを演出に見せている。
演出の谷洋介からのダメ出しで多いのは、「まずは台本に忠実にやってくれ」だった。
台本といっても脚本家が書いたものではなく、全てが出演者自身から出てきた言葉で出来た台本。自分の生理感覚から生み出された台本だ。自分の感覚から出た言葉だけれども、感覚だけでやると稽古が積み重なっていかない、という指摘だった。

ダメ出しを受け、ニュージェネレーションメンバーから出てくる言葉の多くは、「そうですよね」だった。
「ここのくだりを短くしたい」、「余計な間を無くしたい」などの指摘にも「そうですよね」、「ここがそうなんですよね」。

そうではないよ。

今回の作品のタイトルは『僕らはみんな逃げている』。
自分たちが何から逃げているのかを問いかけるようなタイトルだ。「そうですよね」で演出の谷洋介から逃げている場合ではないよ。うまくいかなかった、思うように出来ない、面白くない自分に逃げている場合じゃないよ。

その後、休憩中に藍葉が中村に対して、「あのシーンで中村いつも弱腰の前置きが入るよね」と言った。中村は「面白くないと思われるのが怖くて、癖で予防線を張ってしまう」と答えていた。

分かってんじゃねえか。

自分自身を認められずに逃げてしまっている。
かく言う僕も才能のない自分から度々逃げる。
そんな僕にある先輩は「誰にも才能なんて無い」と言った。

君たちみんな、僕と同じく才能が無い。
だから安心して、谷洋介に立ち向かいなさい。
立ち向かった最後に、自分が祝福してくれるように。
自分に立ち向かいなさい。

高島領也

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ニュージェネレーション公演『僕らはみんな逃げている』
構成・演出=谷 洋介

日程=2024年2月28日(水)~3月3日(日)
会場=山の手事情社アトリエ

詳細は こちら をご覧ください。

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