稽古場日誌

僕らはみんな逃げている 松永 明子 2024/02/22

[稽古リポート 2月13日]逃げみち

3ヶ月ほど前、ニュージェネレーション達による3回目の《ものまね》発表があった。3回目ともなると、例年コツを掴んだメンバーや、何とか成果を叩き出してやろうと気迫を持って臨むメンバーが現れる。しかし、この日はそうではなかった。有り体に言うと面白い発表がなかったのだ。それどころか、メンバー達の間にどことなく漂う緊張感のなさ、できる範囲でやってみましたというやっつけな態度が見えたような気がした。見に来ていた劇団員の間に「これはマズイ」という緊張が走る。

当劇団では稽古見学の終わりに感想を述べるという習慣がある。もらった感想は創作を良くするためのアイディアになる。それを分かっているので劇団員は真剣に感想を伝える。その日語られた印象的だった言葉を紹介したい。

「演劇しかできないから、演劇に掛けたい想いがあるから、ここに来たんじゃないの? だったら命懸けで頑張るべきじゃないの?」
「自分たちに面白いものが作れると、信じていないように感じるよ。」

メンバー達はそれぞれの表情をしていた。
「そうですよね」と言いたげな顔、「一所懸命やったんですけど!」と不満げな顔、「いまいちピンと来ません」の顔。
その日、その後の時間はメンバーと演出・谷洋介とでずいぶん長いこと話し合ったそうだ。

さて、久しぶりに見学に訪れた2月13日のこと。稽古を眺めていてふと「こういう座組みだったのか。」と感じた。稽古場に流れている空気が3ヶ月前とまったく違うのだ。その日は《漫才》と《ものまね》の稽古が行われていた。まだまだお客さまにご覧頂ける状態ではないけれど、演出の谷、安部両氏の言葉に真剣に耳を傾けるニュージェネレーション達。「もっと良くしたい! 頑張りたい!」という気持ちが感じられた。

ようやく彼らは逃げ道を見つけたのだろう。今までの自分から演劇へと。
どうかそのまま逃げきれますように。

松永明子

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ニュージェネレーション公演『僕らはみんな逃げている』
構成・演出=谷 洋介

日程=2024年2月28日(水)~3月3日(日)
会場=山の手事情社アトリエ

詳細は こちら をご覧ください。

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