稽古場日誌
去る6月1日、8日、15日の3日間にわたって、「演劇ジム+(プラス)」というワークショップを実施しました。いつもの「演劇ジム」のインストラクターは越谷のみですが、今回は劇団のベテラン俳優、山本芳郎と川村 岳が加わり、また演劇経験も問わず20代から70代まで幅広い方々にお集まりいただき、にぎやかに演劇のトレーニングに励みました。
一日目の前半は川村 岳による《フリーエチュード》の時間です。
《フリーエチュード》は、あるルールにそって即興でシーンを立ち上げていきます。シンプルなルールでハイテンションにはっちゃけるものから、複雑で頭を使うものまで色々あります。例えば、《目立ち合戦》というエチュードは目立ったひとから抜けていけるというルールです。一見子どものごっこ遊びのようですが、ただはしゃぐだけでは意外と目立たず、ひとの目を引くには高い熱量を持ちつつも客観的な視点とからだのコントロールが必要になります。
ウケなかったらどうしようとか、失敗したらどうしようと思うととても緊張しますが、思いきって飛び込んでくださる方も多く、終わる頃には初日の緊張もすっかり解けた様子でした。
二日目の前半の時間は、山本芳郎による舞台表現のための身体訓練です。
「感覚」と、自分のからだの「重み」と、あらゆるものを「聴く」こと、この3点を鍛えることが大事だというお話のもと、背中の柔軟性を高める体操、人間のまま動物になるエチュード、非日常的な身体性をつかむための歩行など行いました。それぞれ言葉だけでは説明しづらいのですが、例えば、「人間のまま動物になるエチュード」はいわゆる動物の擬態練習ではありません。「猫のような人」を演じてみます。動物の生理感覚やイメージを取り入れることで自分とは違うタイプの役作りを可能にできそうなエチュードです。
想像力を働かせ日常生活ではあまり意識することのない感覚をみなさん刺激されて、自分のからだと表現への関心が一段高まった様子でした。
それぞれの日の後半の時間には、越谷が担当し、チームにわかれ《ショート・ストーリーズ》という寸劇作りをやりました。チームメンバーと協力しあってゼロからシーンを立ち上げ発表していただきます。ドラマのセンスとリアリティのある演技の両方が求められます。
私のほうで共通テーマを設定してお伝えしましたが、チーム毎にまったく違ったシーンができあがってきました。山の手事情社では学生の方や、社会人の方、シニアの方など対象をしぼったワークショップも多いですが、今回幅広いバックグラウンドの方々が集まったことで実現できたシーンも多く、興味深いものでした。
そして最終日には、つくっていただいたシーンのなかから選んだ作品のブラッシュアップに取り組みました。はじめはどうしても会話だけに頼りがちなのですが、設定や状況が腑に落ちてくると、見応えのあるシーンになっていきます。動き方やちょっとした言い方のニュアンス、タイミングによって感情の動きも相手とのやり取りも劇的に変わります。誰かの気持ちが動く瞬間、目にみえないやり取りが交わされる瞬間、そういう劇的な瞬間を求めて時間の許す限りブラッシュアップを行い、最後は劇団員の前で発表して終了!
終了後の懇親会も多いに盛り上がり、他にない交流の場になったと思います。俳優だけでなく、ダンサー、声優から演劇初体験の方まで、それぞれの目的をもってお集まりいただいた参加者の皆さまの熱量に私たちインストラクターも元気をいただきました。
台本はいっさい使わない、俳優の俳優による俳優のための演劇トレーニング。
また開催できる日を楽しみにしています!
越谷真美
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