稽古場日誌

こんにちは。俳優部の喜多です。
今回出演します、『りゅうの目のなみだ』を読んでいると、子どもの頃の懐かしい記憶が蘇ってきます。

私は昔から、本当にビビりです。
幼い頃は特に。
いとこの家で飼っている犬にも、いつまでたっても近づけませんでした。
友だちと外で遊んでいる時は、みんなが危険な所に行っても絶対に私は行かず、みんなの戻りを待っていました。
小学校に入ってもしばらく、水中に潜れるようになりませんでした。
ある夜、月の周辺に雲が漂っているのを、月がものすごいスピードで動いていると錯覚し、騒いで回ったこともありました。
私の、“怖い”の先入観はくだらないながらに凄まじいものでした。

ある日、5人ほどで少し危ない遊びをしていました。
それは、建物の屋根と屋根のわずかな隙間を飛び越えるというものでした。私を除いたみんなはひょいひょいと飛び越えます。私はもちろん、絶対に行きません。向こう側のみんなに手を振っていました。
すると、その内の一人の女の子がこちら側に戻ってきて私の手をとり、
「行ってみよう!」
と言いました。
今までにない選択肢を作ったその子の行動に、私は驚きました。しかもその選択肢はどんどん膨らんでいき、私はいつのまにか、
「行かなければいけない。いや行きたい!」
と思うようになり、なんと飛び越えてしまったのです。
みんなと同じ側の屋根にいるというだけで、あまりにも世界が違って見えました。なんだかどこにでもいける自信までありました。

あの時すんなり屋根を飛び越えることができたのは、私がまだ幼く単純だったからだけではないような気がしています。
その時の誰かのちょっとした言葉、何かの拍子に訪れた小さなチャンスに、偶然私が惹かれたからです。

『りゅうの目のなみだ』でも、漠然と渦巻く恐怖から、空前の世界が開けていく様を、俳優のチカラで皆さまにお届けできたらと思っています。

喜多京香

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『りゅうの目のなみだ』
あらすじ:誰もが恐れる龍を、ちっとも怖がらないこどもがいました。こどもは自分の誕生日に招待しようと龍を探しに出かけます。人間から一度も優しい言葉をかけられたことのなかった龍は、こどものやさしい言葉に心を動かされ、ある決意をします。

構成・演出:小笠原くみこ
出演:山口笑美 安部みはる 松永明子 渡辺可奈子 喜多京香

イラスト『りゅうの目のなみだ』

イラスト:光嶋フーパイ

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OTA アート・プロジェクト
馬込文士村演劇祭2025~ものがたりの世界にふれよう~
演劇公演『泣いた赤おに』『りゅうの目のなみだ』『さるかに』
日時=2025年12月20日(土)・21日(日)
会場=大田文化の森 ホール

詳細は こちら をご覧ください。

馬込文士村演劇祭_表面
馬込文士村演劇祭_中面

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