稽古場日誌

こくごのじかん 佐々木 啓安部 みはる有村 友花渡辺可奈子高島 領也 2022/08/17

『走れメロス』稽古場より(8/17更新)

こんにちは。『走れメロス』に出演する俳優部の渡辺可奈子です。

今回は山の手事情社の公演では珍しい、大人も子どもも楽しめるようなプログラムになっている。『走れメロス』は太宰 治の作品の中でも特にキャッチーで比較的読みやすい作品だ。「人を信じる事の大切さ」を前面に出したヒーロー誕生のお話だ。
しかし、大人になってから改めて読んでみると、メロスのお粗末な約束の取り付けに、滑稽さを感じる。この作品で描かれる「信じる力のような物」は年齢と共に色々な経験をして少しずつ消えていくものなのだ。
少し前、演劇に触れて自分の事を見つめる機会が増えた頃、突然、自分の考える世界が信じられなくなった事があった。(ここで言う世界というのは、私の好きな物とか譲れない物事とか、そういう私の描く私だけの価値観の事である。)誰かの意見や社会の平均的な価値感によって世界が揺らいだのだ。そう言う時は大抵、何をしても申し訳ない気持ちになり、楽しくなかった事を覚えている。「何で演劇なんてやってるんだろう」とさえ思っていた。
恐らく当時の私は「信じる力のような物」が欠如していた。自分を信じ続けると言うのは、かなり難しい事なのだ。
時が経って最近の私は、色々と吹っ切れ昨今話題になっている、「自己肯定感の欠落」と言うのはこの「信じる力のような物」の存在と関連するのではないか? などと自分の世界をまた広げている。

なぜメロスは走るのか。

結局のところ、彼は自分を信じる事を諦めなかった。人生の走る方向が分からなくなった時、メロスの盲目に自分を信じ続ける滑稽な様をみて、胸が熱くなる事がたまにはあってもいいかもしれない。

分かりやすい内容なので、人の数だけ解釈がある作品だろうと思う。自分の感性を信じて、是非、思ったままに楽しんでいただければ幸いです。

渡辺可奈子(8/17追加)

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劇団 山の手事情社 俳優部の高島領也です。

今回の公演『こくごのじかん』では、子どもの頃に触れた児童文学や学校の国語の授業で取り扱うような文学を演劇として世界を立ち上げていきます。

今回『走れメロス』で共に創作するメンバーは自分含めて7人。

演出席から動かざる事山の如し、安田雅弘
メリハリ激しいひょうきん姉さん、安部みはる
走れ! 弾むコンプレックス!!、佐々木 啓
Noとは言わないスーパー演出助手、鹿沼玲奈
小さなボケでも必ずツッコむ、渡辺可奈子
根は優しいはずの黒いシャクレ、高島領也
同い年とは思えないベビーフェイス、有村友花

『走れメロス』は男と男の友情物語として有名ですが、我々7人の間に友情なんてありはしない!!
あるのは、汗と涙と血の混じる肉弾戦!!

『走れメロス』はこの7人の提供でお送りいたします。
乞うご期待!

高島領也(8/7追加)

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『走れメロス』に出演します、佐々木 啓です。
作品のテーマとして【信じる】【信じない】があると思います。
王様は極端に人を【信じられない】。
メロスはとにかく人を【信じる】。もっと言うと【信じるべきだ】と思っていそう。

私自身は王様寄りの考え方です。更に言うと【信じたいけど信じられない】。人を信じられたらどんなに幸せだろうか。
メロスの台詞を読む度に頭が痛くなり気分が悪くなります。正直苦しいです。自分との闘いです。
だからこそメロスと共に走り抜いた先に自分の知らない世界があるような予感がします。
それは【信じて】います。
未知の世界を信じて身体も心も汗だくになりながら稽古しております。
皆さま是非劇場にいらしてください。そして一緒に心地よい心の汗をかきましょう。

佐々木 啓(7/25追加)

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『走れメロス』に出演します。安部みはるです。
このお話はとてもシンプルです。
約束したことを自分の意思で守り抜くお話です。手段はさらにシンプル、メロスはひたすら走るのです。
子供の頃の夢や、「今度飲みに行こうね!」という、かるーい口約束など、言っておいて実行できないことが沢山あるわたくし、耳がいたい限りです。

『走れメロス』を作っていて難しいな、と思っているのはやはり「走る」ことをどうやって表現するかです。
距離、景色の変化、体の疲れ具合……。
本で読むだけでは読み取りきれないことを表現したいと奮闘中です。

メンバーと話したことは、ラストシーンに「感動」を作り出したいね、ということ。
稽古はまだまだこれからが佳境です。
ぜひ劇場で目撃してください!

安部みはる

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『走れメロス』に出演します。有村友花です。

子供の頃教科書で『走れメロス』を読んだ時、「メロスかっこいい」「諦めず、真っ直ぐ生きていれば救われるんだ!」と思っていました。

しかし、大人になって読み直すと全く違った感想が出てくる。「実はメロスって変な奴なのかも!?」とか。

今、私達は稽古でシーン作りをしています。
劇団員それぞれの『走れメロス』があり、どんな作品にするか話し合いながら作ってく過程がとても楽しいです。

私達から生み出される『走れメロス』はいったいどんな作品になるのでしょうか、わくわくしながら創作中です!

有村友花

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『こくごのじかん』
日程:2022年8月19日(金)~20日(土)
会場:大田区民プラザ 大ホール

詳細は こちら をご覧ください。

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