稽古場日誌

ワークショップ外部活動 谷 洋介 2024/12/12

島根・岡山ワークショップ リポート

毎年恒例の芸術家の派遣事業。学校にアーティストが派遣され、子供たちが芸術を観たり体験したりする事業です。
今年は10月と11月に島根と岡山の小学校でワークショップをおこなってきました。
島根県の雲南市立吉田小学校と益田市立安田小学校、岡山県の玉野市立宇野小学校へお伺いしました。

各学校で90分~110分の時間をいただき、前半は俳優の訓練方法を紹介・体験するワークショップをおこない、後半は小作品『走れメロス』を観ていただきました。

前半のワークショップは、自分の体をたたいて緊張をほぐすアップから始まり、次に左右非対称の動きを全員で一緒にやります。
左右非対称の動きは、例えば右手は上下に動かす二拍子、左手は上横下に動かす三拍子を同時にやる、などです。
見た目は簡単そうですが、やってみると難しい。はじめは「できなーい」と言っていた子供たちも何度かやるうちに「できた!」と嬉しそうな声が上がっていきます。

そのあとはいろんな《歩行》をおこないます。
私たちがスローモーション《歩行》のデモンストレーションを披露すると、どの学校でも「AIだ!!」と子供たちが興奮していたのが、印象的でした。
AIというと私は人工知能とか架空の人物という認識なのですが、生身の人間がスローモーションで歩いているのを観て想像がふくらんでいる子供たちの反応が面白かったです。
続いて、うずくまっている姿勢から一気に大の字のポーズを作る《平行》と、様々な感情をたたえながら一瞬でポーズを作る《二拍子》をおこないます。
この《歩行》~《二拍子》のときは私たちが見本をみせたあと「これ一緒にやってみたい人!」と声をかけます。
積極的に舞台上に上がってくる子もいれば、恥ずかしそうにしながらも勇気を振り絞って出てくる子もいます。学校によっては全児童の半分以上が出てきたりもしました。
友達がはしゃいだり、表現に集中したり、はたまた先生も舞台上で大真面目にふざけたりします。
それが新鮮なようで、観ている子供たちが大いに盛り上がります。

このように俳優の訓練を実際に体験したあと、25分ほどの小作品『走れメロス』の上演をします。
私たちの『走れメロス』は、舞台セットは小学校のイスのみです。あとは俳優の身体を駆使して情景や心情を表現します。
低学年の子供には少々難しい話かもしれませんが、前半のワークショップで様々な身体の表現を目の当たりにすることで、想像力が掻き立てられ、みなさん集中して観てくれました。

終わったあとに先生方から、
「普段はおとなしい子がはしゃいでいたのが新鮮でした」
「いつもはあまり集中できない子が、『走れメロス』が始まった途端、じっとみていた」
という話を伺い、とてもうれしく思いました。

また、今でもコロナ禍の余韻で、子供たちははしゃぎたくても遠慮してしまう傾向があるようです。
このワークショップ型の演劇鑑賞教室で、そんな子供たちの殻を少しでも破けたのなら幸いです。

谷 洋介

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【これまでの学校ワークショップリポート】
隠岐養護学校アウトリーチ リポート/喜多京香
宮城県高等学校演劇リーダー研修会 リポート/斉木和洋
岡山県・大田区ワークショップ リポート/高島領也
宮城県高等学校演劇リーダー研修会 リポート/川村 岳
岡山ワークショップ リポート/安部みはる

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