公演情報
ENBUゼミ安田クラス公演
構成・演出=安田雅弘
会場=天王洲アイル スフィアメックス
■ご来場の皆様へ
本日はようこそおいでくださいました。
私は一年間を通じてこのクラスのメンバーに「自分で考え、判断すること」を強いてきました。「演劇をやりたい、できれば職業にしたい」などという無謀な欲望を持った人間に私が伝えることができるのは、つまるところそれくらいのことだと思うからです。
今回の発表会は、この一年間クラスのメンバーが取り組んできたさまざまな課題をまとめたものです。はじめから一本のお芝居にしようとは考えませんでした。理由はいくつかあります。
公演という形で一本の作品にしようとすると、とても時間がかかります。限られた授業時間をそのために費やしてよいのだろうかという疑問がありました。メンバーはまだ演劇に触れたばかりです。多岐にわたる演劇的な課題を俯瞰できる時間を持った方が今後の彼らのためになるのではないか。またもし演劇を続けていくのであれば、公演は今後いくらでも打つことができます。
しかし最大の理由は、今後演劇活動をするかどうか迷っているメンバーに、安易に台本に取り組んでほしくなかったからです。たかだか一年でせりふをおぼえ、役作りすることで演劇を始めたと錯覚してほしくなかったのです。せりふは他人が書いた他人の言葉です。ハムレットのせりふは、イギリス中世の劇作家シェイクスピアが書いた中世デンマークの王子の言葉なのです。そんな距離のある言葉に取り組む前に、まず自分がこの世界に対してどのように位置していきたいと考えるのか。私は何者なのか。私はなぜあえて他人に化けたいと思うのか。それを自分の行為や言葉でほかの人に伝え、語ることが俳優をめざす人間に第一に問われなければならないことではないかと私は考えます。
今日お見せする内容は主に正規の授業時間に課題としたものですが、それ以外にも、合宿を行ない、集団でものを作る上での基本的な環境作りやふるまい方のルールを体験してもらいました。
今後のメンバーの活躍にご期待ください。
メンバーの皆さん、一年間本当にお疲れさまでした。
安田雅弘