公演情報

[1998年]ぴん

山の手事情社 + 渋谷ジァンジァン提携公演「catalogue」シリーズ

たった一人(=ぴん)で世界と向かい合う。

山の手事情社の俳優は、まずはじめ(=ぴん)に、たった一人(=ぴん)で世界と向かい合うことを要求されます。劇団内部で演技を発表し互いに批評する課題があり、そこでは、物まねや、いそうでいない人物や、時には人間かどうか疑わしいモノが登場したりもします。出来映えはぴんからきりまで。その中で、レベルが高く、公演内容にマッチしたものは、本番の舞台で披露されてきました。
「カタログ」シリーズとは、山の手事情社の稽古メソッドを紹介する公演です。今回の「ぴん」では、数多くの発表から選りすぐり(=ぴん)を総集してお目にかけます。一人一人の俳優が、世界と対峙すべく苦悶苦闘した、大笑いする中にも人間存在の深み漂う珠玉の小品ぞろいです。

構成・演出

安田 雅弘

キャスト

山本 芳郎
三村 聡
山田 宏平
村上 哲也
水寄 真弓
内藤 千恵子
大久保 美智子
井上 奈保未
丸山 朋子
倉品 淳子

照明=関口祐二(Air Power Supply)  音響=江村桂吾  舞台監督=浦弘毅 宣伝美術=マエヤマヨウコ 演出助手=小笠原くみこ カンパニースタッフ=太田真理子長谷川尚美川村岳山口笑美岩淵吉能祁答院公継斉木和洋・木邨かおり・根岸由季・河原史江・佐藤由美子・田中美帆・山本北斗 助成=芸術文化振興基金 共同制作=大村冬彦(渋谷ジァン・ジァン) 制作=奥林啓史南千歩・平口雅世 製作=UPTOWN Production Ltd.

ジァン・ジァンと私

「渋谷のジァン・ジァンってとこだから、絶対来いよ」と級友からの電話は切れた。忘れもしない、高校1年の夏休み、古文の宿 題をやっているさいちゅうだった。2学期になれば文化祭があって、クラスで演劇公演をやることになっていた。一流大学を出て商社マンになろうと思っていた 僕には、演劇にも文化祭にも全く興味なかった。こうして勉学に勤しんでいる間こそが、まこと僕の至福の時だった。ああ、それなのに仲間のちょっとしたいた ずらでクラス委員に祭り上げられてしまった僕は、少なからずその公演に責任を感じ、憂鬱な日々を過ごしていた。プロの演劇の技を盗むんだか何だか知らない が、演劇なんかのために大事な勉強時間を奪われるなんて……。僕は仕方なく劇場にたどりついた。うすぐらくてほこりっぽく、どことなく胡散臭い空間。20 年たった今となっては、その何が僕をとらえたのかよくわからない。ただ、その後毎月のようにそこに通い、客席にいた自分が、いつしかお客さまを迎える側に 立っていることに大きな驚きを感じる。山手教会周辺の変貌ぶりからすれば、ここは重要文化財か何かのように変わっていない。しかも毎日観客を受け入れつづ けていながら。どうも僕はここに来るといろいろと驚き懐かしみ考えてしまうのだ。そういう場所が今年限りでなくなってしまうと聞いて、僕はある感慨につつ まれている。

1999.1.21 – 24 [ 渋谷ジァンジァン ]

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