公演情報
劇団山の手事情社公演
東京芸術劇場小ホール1
青い鳥さがし。
『青い鳥』といえば世界中の子供たちに親しまれている名作童話ですが、もともとは演劇上演用に戯曲の形式で書かれたものです。作者M.メーテルリンクは1911年にノーベル文学賞を授与された当時から世界的な作家で、詩人、劇作家、エッセイスト、哲学者として、亡くなるまで第一線で活躍しました。
およそ百年前のヨーロッパで生まれた本作品を「ウサギ小屋」と評される現代日本住宅を舞台に、先鋭的な表現手法を駆使して描きます。
『青い鳥』は有名な作品だが、戯曲の形で書かれていることは案外知られていない。私は、テキストには極力忠実に、しかし結果としてはメーテルリンクを借りて、現代の日本が描きたいと思っている。
先祖から見たら私たちは一見王侯貴族のような暮らしをしている。飢えも身分制度もなく、暑さ寒さは空調でしのぎ、夜中のコンビニで栄養ドリンク片手におでんを食べている。それでいてなお、私たちは時として、あるいは日常的に「自分はこの社会に適していないのではないか」と疑わざるを得ない感覚の中に漂っている。
今年も記録を更新しそうな自殺者の人数や、増加傾向にあると思われる心身症に苦しむ人々を引き合いに出すまでもないだろう。青い鳥をさがす行為を、私たちはいまだに陳腐にできないでいるのだ。
安田雅弘
原作=M.メーテルリンク 照明=関口祐二 音響=斎見浩平 舞台監督=海老沢 栄 衣装=渡邉昌子 宣伝美術=福島治 演出助手=小笠原くみこ・高橋桃子 制作=南千歩 製作=UPTOWN Production Ltd.